すす払い(煤払い)の意味
すす払い(煤払い)とは、正月を迎えるために1年に1回家の内外を掃除する行事という意味です。
家の煤(すす)を払うことから地域により呼び名がいろいろとあります。
ことはじめ、まつならしや、正月迎えなど地域によって呼び名が違うこともあります。
掃除とともにお正月に年神をお迎えするためにおこなわれます。
この、お正月準備の事始めがすす払いの持つ意味合いです。
現在は実施している家庭は減っています。
しかし、日本各地の神社やお寺ではこの行事は残っています。
そのため、実際に目にすることが可能です。
テレビや新聞などのメディアニュースで報じられることも多いです。
こうして年末の風物詩の1つとなっていますね。
煤(すす)とは有機物が不完全燃焼を起こした際に生じる炭素の微粒子のことです。
薪や木炭などを火にくべた際に黒煙が発生します。
これは黒い粉末状の微粒子が含まれていることによります。
ちなみに完全燃焼であれば、白もしくは灰色の煙が発生します。
燃焼が不可能な成分であるカリウムやマグネシウムなどが残り、これが灰です。
現在の生活様式では暖を取る際や調光、そして調理を行なう際はガスや電気を用いています。
旧来の生活様式ではそれらの全てを実際の火で賄っていました。
室内の照明には油脂やロウソクを暖房や調理には囲炉裏や暖炉を利用するのが一般的です。
それらを燃焼させる際には必ず煤が発生します。
煙に乗って上昇した煤は、天井や柱へと付着することが常でした。
一般家庭の室内でガスコンロ以外に火を使う場面は少ないです。
お寺や神社、教会などでは現在もロウソクや線香など火を焚く場面は多いです。
このため現在もすす払いの行事が残っています。
また煤と言えば火を伴うことによって発生する微粒子だけを思い浮かべがちです。
しかし、室内に溜まる細かな粒子状の汚れも煤と呼ぶことがあります。
衣服やじゅうたんなどから発生する繊維の微粒子や大気中に漂う塵などです。
また、微生物や小型の昆虫の死骸などが主な物質です。
もちろんガスコンロの使用によって発生した微粒子の汚れや油汚れも、これらに該当します。
そのためすす払いとは、旧来の生活様式では暖房や調光の手段であった火によって発生した汚れを落とす行事です。
加えて、大気中に漂って室内に降り積もった塵や埃を払う両方の行為を指します。
すす払い(払い煤払い)は伝統行事
寺社仏閣だと伝統行事や大掃除を兼ねて、今でも12月13日にすす払い(煤払い)が行われます。
12月13日に行なわれるすす払いは別名が多いです。
地域によっては、煤取節供や煤掃きの年取と呼ぶ所もあります。
すす払いは単なる掃除だけではなく年間の厄を払うという大事な節目でもありました。
物忌みとは日常的な行為を控えて穢れを避けることをいいます。
旧来は肉食や匂いの強い野菜を避けたり他の者と火を共有しない。
このような禁止事項が多い習慣でした。
これは自身の穢れを払うと同時に来訪する神など神聖な存在に自らの穢れを移さないという側面もあります。
正月にお迎えする年神様に対しての準備はご利益を受け取るだけでないです。
穢れ(けがれ)を移さないという陰陽道からの考えも含まれています。
これらから分かるように現在年末に一般家庭で行なわれている掃除との違いがあります。
家の1年の汚れを落とすという単なる清掃目的だけでないです。
年神様を迎える年神祭の準備のためという「信仰」も含まれていると言えるでしょう。
また「掃除」と異なる点としては清掃を行う場所もその相違点として挙げられます。
両者ともに家や建築物内の清掃を行なうという点は共通しています。
神棚や仏壇など神仏にまつわる箇所の清掃を重視するという点がすす払いの特徴であり違いです。
たとえば寺院では本尊のある本堂にてロウソクや線香など日常的に火を用いています。
このため、自然とすすが溜まりやすくなっています。
すす払い(煤払い)と大掃除との違い
すす払い(煤払い)はその名の通り、1年分の溜まった汚れを取り除き、年神様をお迎えするのが目的です。
大掃除と似ていますが暖房器具が、すすを発生させにくくなった現代では宗教における意味合いの方が強いといえます。
最初は1つの行事だったので、今も一般家庭に残っているといえばそうですが伝統的な意味合いは薄まっています。
だからこそ、2つの行事は元々1つだったと考えながら掃除をすることです。
こうすることで、特別な意味を思い出すことができます。
元々、江戸時代ではすす払い(煤払い)のことを大掃除と言い、違いはなくて同じものでした。
やがてすすを払う必要がなくなってからは、一般家庭で行事を行う必要性が薄まりました。
そして、何時しか宗教行事と1年の終わりの掃除に分けられるに至ります。
大掃除はお正月を迎える準備
一方、一般家庭で伝統行事にならって大掃除をするなら、12月13日から30日の間に済ませるのがベストです。
大晦日は年神様を迎える直前なので、慌ただしくするのは御法度とされます。
12月29日は苦を連想させる1日なので、この日を除いた日に済ませてしまいましょう。
落ち着いて1年を振り返ったり新年を迎えるのが理想的です。
現代は伝統が希薄になっていますが、お部屋を綺麗にして気持ち良く新年を迎えるという意味で行います。
そのため、鬼宿日の12月13日を目安に早く終わらせることが重要です。
同様に一般家庭の仏壇や神棚も最近ではロウソクを模した電気照明を使うことが多いです。
とはいえ火を用いることもあるでしょう。年神様(歳神様)をお迎えすることに加え現在はその要素はないです。
かつては、ご先祖様をお迎えすることもこの年中行事には含まれていました。
多くのご利益を持った年神様をお迎えして家にご利益を授かるという目的は現在も残っています。
さらには、すすを払うことで1年の災厄を振り払うといった意味合いも含まれているのです。
お正月を迎える準備とたくさんのご利益を授かることです。
そして災厄や穢れを払うことがこの行事の大きな主旨となります。
すす払い(煤払い)を行なう理由
年末の恒例行事である大掃除の元となるのが、すす払いです。
これは、正月を迎えるための準備として正月事始めに含まれる行事のひとつです。
さらには現在は盆のみとなっています。
しかし、昔は正月にもご先祖様が帰ってくると考えられていました。
そのため、神棚や仏壇の掃除を行い正月の準備をする習わしがありました。
時代が移るにつれて家中を掃除して年神様やご先祖様をお迎えするようになりました。
昔の火種は薪や炭であり、照明・熱源や調理の要でした。
このように室内では何かと火を利用する頻度が高いものでした。
バーベキューやコンロのグリルで調理をした経験がある方にはお馴染みですね。
火をおこすと黒ずみ、すなわちすすが発生するのはつきものです。
不完全燃焼によって巻き起こったすすは黒煙とともに上空へと舞い上がります。
そのため天井や壁へと到達してそのまま汚れがついてしまいます。
当時の掃除道具としては、竹竿の先に藁を取り付けたすす梵天(ぼんてん)が一般的でした。
竹竿の長さを活かして天井や壁の高いところに付着したすすを払うのが掃除方法です。
また、大店といわれる商家においては、煤払いが終わると家の主人を胴上げしました。そのあとで宴を開いたとされています。
すす払いによって1年間の汚れを払って家の隅々まできれいにします。
こうすることで、年神様がたくさんのご利益を持って降りてくると言い伝えられています。
このため、盛大かつ賑やかな民間行事であったことが記録より分かっています。
ちなみに同じ12月13日には門松にする松や、おせち料理を調理するための薪などを採りにいきました。
この習慣を松迎えといいます。
お歳暮を12月13日頃より贈る習慣は、もともと正月用のお供え物であったことの名残りです。
すす払い(煤払い)の由来
煤払いは、江戸幕府において江戸城の城内の大掃除を行い始めたのがそもそもの由来となっています。
また、江戸城内においてのすす払いは奥女中が平時に用いていた白無地の手ぬぐいを染め模様に変えて神棚や城内を清めたと記録に残っています。
1年間の汚れを払って隅々まできれいにすることです。
年神様がたくさんのご利益を持って降臨すると考えられました。
始めたのもこの頃からです。
現在の年中行事は江戸城から庶民へと伝播(でんぱ)したものが大半です。
すす払いもこの例に当てはまります。
江戸城の慣習が徐々に庶民へと伝わり江戸中の庶民も同じ日にすすを払い始めました。
これで年神様からのご利益にあやかろうとしました。
この習慣は今日まで伝えられています。ガスと電気で火種からは遠のいた現在でも神社仏閣などです。
こうして、現在もこのすすを払う行事が残っています。
もちろん地域や家庭によってはこの日に神棚や仏壇などをきれいに掃除します。
宗教的な部分は別としても、使わなくなったものを処分して部屋をスッキリさせることは、新年を迎える理想的な方法です。
なお現代では、すすを払いません。
それでも大掃除をして新年の準備を済ませれば自然と年神様をお迎えする環境を整える結果となるわけです。
また、年末の大掃除の計画を立てたりといったように名残りを見ることができますね。
すす払い(煤払い)の起源
現在行われているすす払い(煤払い)の起源は、平安時代の宮中行事にあるとされます。
これは、平安時代に中国から伝わりました。
江戸中期までの823年間使用されていた宣明暦という暦によれば12月13日は鬼の日にあたりました。
年神様をお迎える為に室内を清める、それが風習として始まり、後に行事になったと考えられます。
古代中国暦による28宿のうちの鬼宿日が、この鬼の日であり鬼が外に出ない日とされています。
鬼が外に出ないため婚礼以外の万事が吉となります。
これが正月を迎える準備をする日に適していると考えられています。
お寺に広まったのは鎌倉時代以降といわれ、掃除が修行の一環として広まったのが切っ掛けです。
神社の間でも定着したことから、すす払い(煤払い)は寺社仏閣の行事となりました。
このすす払い(煤払い)の起源には、平安時代に行われていた古い道具を年末に処分する風習も関係します。
道具は、100年使うと妖怪に変化して怪異をなすという言い伝えから道具を捨てることが風習になった形です。
庶民の間で広まったすす払い(煤払い)は、どちらかといえばこの妖怪よけの一種が起源に近いです。
このように、起源は平安時代の宮中行事と庶民の風習がルーツになっていると結論づけられます。
ちなみに寺社仏閣の境内で行われる蚤の市(のみのいち)は道具を捨てる風習が変化したものです。
また、他人に譲ることで道具に新しい命が宿るとされます。
これはリサイクル精神に近く、使えるものを捨てるのではなく必要とする人に使ってもらうのが一番という考えに関係します。
現在のように12月13日に行なうようになったのは、江戸時代のことです。
全国的には12月13日に行なわれることが多く新年を迎える日取りも近いです。
このことから大掃除も併せて行なわれることも少なくないです。
このようなことからも年の瀬の年中行事として知られています。
縁起の良い12月13日に年神様を迎える準備をする。
これがふさわしいということで定着していったのです。
ちなみに5日前の12月8日は事始めといってこちらも縁起の良い日です。
この日から正月準備をする地域もあります。
近年では正月休みに入る12月29・30日や大晦日である31日に行なうのが通例です。
しかし、古来は12月13日に行なうのが伝統でした。
正月事始め並びにすす払いを行なう理由として、お正月は年神様を招き入れる行事であったことが挙げられます。
また、元日には物事の始まりという意味もあり1年で最初の1日目でもある大切な日です。
そのため、すす払いという行事も新年に向けての大切な行事のひとつといえますね。
これらのこともあり、12月13日が正月事始めおよびすす払いに設定されました。
すす払い(煤払い)が12月13日の理由
すす払い(煤払い)が12月13日なのは江戸時代の暦における鬼宿日で、吉日とされていたのが理由です。
また、当時は町人だけでなく役人も含めて、身分に関係なくすす払い(煤払い)が行われました。
鬼宿日は二十八宿における鬼宿で、中国の天文学にルーツがあります。
日本だと、この12月13日は鬼が外を出歩かない1日で、何をするにも良い日とされています。
吉日になった理由には諸説あります。
中でも、お釈迦様の誕生日が鬼宿日だからという説が有力です。
正確には、旧暦の4月8日が誕生日で、そこから28日周期でまた鬼宿日が訪れることになります。
実は鬼宿日とは毎月存在するものですから、1年に1回12月13日だけというわけではないです。
しかし、年の瀬を迎える12月には、年神様をお迎えする準備が必要です。
すす払い(煤払い)もその1つで、12月に最適な1日が検討された結果、鬼宿日の12月13日が選ばれたと考えるのが妥当です。
つまりすす払い(煤払い)がこの日に行われる理由は、お釈迦様が生まれた誕生日だからです。
この日は、鬼が外を出歩くことなく婚礼以外に適しているからです。
また、邪気を払う意味もありますから、まさに絶好の日和です。
さらに、新たな気持ちで新年を迎える切っ掛けにもなります。
これを知っていると、違った気持ちで1日を過ごせるようになるでしょう。
暖房器具が進化した現代では、一般家庭だとすすを払う必要性がなくなっています。
しかし、お寺などでは今でも毎年実施されます。
それは伝統による部分もありますが、宗教的な意味合いが強い1日なので、どの寺社仏閣でももれなく行われています。
お釈迦様が生まれて鬼を追い払ってくれる1日、そう考えれば納得できるはずです。
すす払いの各地の変わった風習
中にはすす払いのために特別に笹竹を用意したりするところもあります。
行事を終了した後にお供え物をしてから正月のドンド焼きを保存したりします。
このような伝統行事が色濃く残る地方もあります。
徳島県北部の一部地域では殿様のすす払い日と呼んでいて同じように12月13日に行なう行事です。
ここでは室内の掃除はせずに神仏にまつわる箇所だけを掃除します。
さらに、東北地方の一部地域にある変わった風習も一つ紹介しますね。
使用後は戸外に立てかけておきます。
松明を灯した上でお供え物を施すなど古来の慣習をそのまま受け継いでいます。
東京都目黒区の不動尊・浅草観世音においては12月12日に行なわれるなど日程がずれるケースも見られます。
大掃除はいつから
年末の大晦日やその数日前に行なわれるのが大掃除です。
これには1年の汚れを落として新年を迎えるという意義があります。
その点は共通していますね。
現代は伝統が希薄になっています。
お部屋を綺麗にして気持ち良く新年を迎えるという意味で行います。
すす払い(煤払い)は、改めて伝統を考える価値がある1日です。
すすを払わないとしても、1年の最後に行う掃除において伝統行事に思いを馳せてみる。
これが、行事が生まれた意味を考えたり伝統を受け継ぐ結果に結びつくでしょう。
年神様や大掃除については、お正月や元旦、元日などともゆかりが深いものです。
もともとはこのすす払いの行事も12月13日に行なわれていました。
しかし仕事や学業で忙しく過ごす関係から、やがて正月休みが始まる年末へと移行していったというのが定説です。
すす払いと(煤払い)と事始めの関係
すす払いが行なわれる12月13日は、門松にするための松やおせち料理を調理する準備の日です。
そのための薪を採りに行く松迎えなど正月を迎える準備を行なう行事の日でした。
すすを払ったり松迎えを行なう12月13日でのお正月準備を総称して正月事始めと呼びます。
奉公人の出替りの日でもあったこの日は、正月用の米をつくなどさまざまな行事が行われていました。
先述の通り新しい年を迎えるにあたり餅つきなどで、ご利益をもたらしてくれる年神様を迎える準備をします。
この日は、婚礼以外は万事に大吉とされる鬼宿日・鬼の日である12月13日がふさわしいとされています。
そこで、この日に正月事始めを行なうようになったのです。
しかし一方で事始めにあたる12月8日に正月の準備を行なう地域もあります。
12月8日と2月8日を事八日(ことようか)と呼び、古来よりさまざまな行事が行われてきました。
鬼の日と同様に事八日は事を始めたり納めたりといった物事の終始における大事な節目の日です。
事八日には針供養を行なったり、お事汁を食べたりといった習慣もあります。
針供養については下記のページで詳しく紹介してみましたので参考にしてみてくださいね。
「事」とは本来お祭、もしくは祭事を示す言葉でありコトノカミと呼ばれる神様を祀るお祭りです。
そのための日程が、12月と2月の8日にあたります。
注意して覚えておきたいのは2つ視点があることです。
年神様の視点からは12月が田の神様の視点からは2月がそれぞれ事始めである点です。
前者は新年に迎える神様で後者は田畑を耕し農耕に従事する人々のための神様となります。
新年を迎えるにあたっては、年越しの神事となりました。
年末を迎える準備の事始めとして12月8日が該当するという訳です。
すす払いなどの行事を完遂し無事に正月を迎えたあとに締めの行事として2月8日に事納めを行ないます。
すす払いとの関係性としては旧来は12月8日に行なっていたと言えば分かりやすいでしょうか。
民間で行なわれる年中行事のほとんどが江戸時代に作られています。
このように、すすを払う行事を含め正月準備が移行したのもやはり江戸時代です。
大吉日とされた鬼宿日・鬼の日にあたる12月13日に江戸城ですす払いを行いました。
このことから全てが始まりました。江戸城で開始された当初は、御煤納めという行事名であったことが記録に残っています。
これが江戸時代の長い年月の間に徐々に民衆にもその習慣が広まりました。
そして神社仏閣でも同様に行なわれるようになりました。
なお、12月といえば師走です。
また、師走に忙しい職業や忙しいのはいつからいつまでかを下記で載せてみました。
こちらも年末年始の用いや準備で忙しい時期ですね。
ただ全ての地域が12月13日に移った訳ではないです。
現在も、12月8日に行なう地域も残っているということです。
すす払いの意味|まとめ
すす払いは、正月事始めに含まれる行事の一つです。
このように年に一回年神様を迎えるための掃除という意味合いもありました。
また、その由来は、江戸城内の大掃除だったんですね。
これが、徐々に庶民へと伝わりました。
こうして、江戸中の庶民も同じ日にすすを払いをしてきました。
そして、年神様からのご利益にあやかろうとしたということです。
年末の大掃除の時期が来たら今日のこの記事を思い出していただけると嬉しいです。
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