セル画の保存方法をビニール袋とファイルと額で比較
セル画の保存方法をビニール袋とファイルと額で比較すると、それぞれにメリットやデメリットがあることが分かります。
私もいろいろ調べてみた体験からお話しますと、密閉にも良し悪しはありました。
それでも、おすすめできるのは、保存性を考えるならビニール袋が一番だと思われます。
ここでは、ビニール袋・ファイル・額を比較してみてのそれぞれのメリットやデメリットの解説をしていきますね。
ビニール袋での保存方法のメリットとデメリット
またビニール袋はコストが低く、入手性が良好なことや誰でも使いやすいなどのメリットが挙げられますね。
ただし、密閉保存はセル画から発生する酢酸の逃げ場がなく、ビニール袋内に溜まることを意味します。
定期的に開封したり空気を入れ替えないと、溜まった酢酸が劣化を引き起こします。
ニオイを嗅いでみて酢酸臭がするセル画は、しばらく風が通るところで置いて飛ばしたり、他の作品と密着させないなどの工夫が必要です。
保存を始めた当初は大丈夫でも、放置していると経年で急激に劣化することもあります。
そのため、定期的に状態に異常がないかチェックをおすすめします。
セル画のファイルでの保存方法のメリットとデメリット
ファイルはいわゆるクリアファイルのことです。
市販されているものが使えること、入手性やコストといった点がメリットです。
ビニール袋のメリットと共通点は多いです。
ですが、一番の違いとして完全には密閉されないことにあります。
クリアファイルを更に袋に入れるかどうかは自由です。
しかし、クリアファイルに挟むだけであれば酢酸が溜まらないので寿命を延ばせます。
なので保管枚数が多く管理が大変な場合に役立ちます。
光の透過によるダメージが気になるなら、光を通しにくい黒色が選べます。
そういうところもクリアファイルの魅力です。
デメリットとしては、柔らかく外圧で容易に変形することがあります。
なので、重量が掛かったり強い衝撃からの保護には向かないです。
薄手だと垂直に真っ直ぐ立てて置けないことは本のように保管できないというデメリットに繋がります。
水平にして束ねて置くと、今度はセル画に圧力が掛かって癒着する可能性があるので気をつけましょう。
セル画の額での保存方法のメリットとデメリット
額はセル画を壁に飾って楽しめるのが最大のメリットです。
しかし、同時に寿命を短くする恐れがあるのがデメリットだといえます。
黒色で厚みの薄い額を使うと、フィルムのコマのようにセル画を演出することができます。
見栄えが良好で壁に飾ると映えます。
ですが、必然的に光に触れてしまうことから、光による劣化のリスクが懸念されます。
窓際で外の光が入り込む場所は論外です。
温度による影響も考慮すると、冷暗所を選択することが不可欠です。
つまり、保管場所選びが必要になるので、そこもデメリットの1つに数えられます。
セル画の保存方法のメリットとデメリットのまとめ
結局のところ、セル画の保存方法はどれがいいかといえばビニール袋でしょう。
注意点は密閉しつつ定期的に開封して空気を入れ替えるのが賢明です。
というのもセル画は長期保存を前提に作られていないので光や気温、湿気にガスといった影響で状態が変化するためです。
特に、古いセル画は加水分解に弱く、高温多湿環境に置いておくと急激に劣化し始めます。
梅雨期にカビが生えるような環境はNGです。
いずれかのセル画の保存方法を選ぶにしても環境の選択が重要になってきます。
額は密閉状態ではなく光が当たることから、こちらも長期保存には向かない保存方法です。
額で保存する方法には何時でも見て楽しめるのは魅力的です。
しかし、保管場所に光が存在すると劣化してしまうので、ジレンマがあります。
セル画の保存をビニール袋でやる方法
ビニール袋でセル画の保存をするなら、まずは裏側の紙を剥がす必要があります。
紙は時間が経つと酸性に傾き、密着するセル画の劣化を招きます。
そのため、保存を行う前に剥がすことが欠かせないわけです。
手で剥がれない場合は、溶剤を使って剥がすことになります。
ただし、この方法にはリスクがあるので要注意です。
溶剤は溶解力が弱いと紙が剥がれず、逆に強力だとセル画にダメージが入ります。
ただ剥がれないときは無理をせず、そのまま一緒に保存した方が無難です。
汚れが付着したままだと、ビニール袋で保存を始めた後に劣化要因としてダメージを与えることになります。
安心して保存する為には指紋などの汚れを拭き取り、綺麗な状態にしてからビニール袋に入れることです。
加水分解する素材に水の付着は厳禁です。
乾拭きをするか、紙を剥がすのと同様にやさしめの溶剤で拭き取るのが良いでしょう。
勿論、力を入れたり何度も繰り返し擦ると傷みます。
なので、あくまでも軽く部分的に汚れを除去するだけに留めます。
拭くときに埃があると摩擦で傷をつけてしまいます。
最初に埃を飛ばすのが原則となります。
毛先の柔らかいブラシは、ピンポイントで埃を取り除くのに便利です。
これを1つ用意しておけば何かと役立ちます。
劣化要因を取り除き綺麗な状態になったら、いよいよビニール袋にセル画を入れます。
ビニール袋といっても、本当にビニール素材の袋ではなく、変質しにくく耐久性のあるポリエチレン袋などが最適です。
ビニールという呼称は便宜上のもので、現在はコンビニの袋もごみ袋もビニールから他の素材に置き換わっています。
耐久性が高いので長寿命でおすすめです。
長期保管してもポリエチレンならセル画の劣化を引き起こす要因になりにくいです。
狙い目は柔らかめよりややパリっとした硬めで、こちらの方が高分子で水を通しにくく防水性に優れます。
この方法は紙を剥がして清掃を行い、最適な袋に入れるステップが基本です。
袋ごとクリアファイルに入れる手もありますが、酸素や湿気などを遠ざける目的なら無意味です。
管理しやすくなったり重ねて置いても傷みにくくはなります。
しかし、コストや手間が掛かるので、結局は好みで選ぶのが正解です。
それよりも、冷暗所に置いて光に触れさせないことの方が、寿命を延ばす結果に寄与するでしょう。
セル画の保存をファイルでやる方法
セル画をファイルで保存する方法は、基本的には清掃して挟む形となります。
必要なものは文房具店で入手できますし、手頃な価格帯のお店でも取り扱われていたりします。
保存する為の道具が劣化を引き起こす状況はあってはならないです。
絵や写真が印刷されている製品は、インクに含まれる成分が少しずつ揮発します。
この成分はファイルをカールさせてしまうほどなので、セル画に触れさせるのはNGです。
その為、無地で何も印刷されていないものが好ましいです。
また、シンプルな方が保存向きだといえるでしょう。
一般的には、ファイルに直接セル画を挟むよりも、予め袋に入れておくことが多いです。
酢酸のニオイが強めで、まだまだ揮発する恐れがある作品についてはあえて直接挟んで保管した方が良いこともあります。
厚みがあって硬く変形しにくいファイルは、セル画を垂直に立てて保管するのに便利です。
所有する作品の数が多く、大量に保管する必要があるなら、袋に入れるだけよりも大幅に管理しやすいはずです。
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表紙に名前を書いておくと、直ぐに目的の作品が見つけられるので、管理を行う意味で合理的です。
ところが、この方法はやや窮屈なところにセル画を押し込む感じです。
なので、癒着しないように一手間加えておきたいところです。
表面にロウが塗られたパラフィン紙は、表面を保護するのに向いています。
何より癒着が防げるので使い勝手に優れます。
作品の保護したい面を清潔にした上で、上からパラフィン紙を乗せて袋やファイルに入れれば、これで保存の準備は完了です。
当然ですが、サイズが合わないものに無理やり押し込んだり、油断して長期的に放置してしまうと傷みや劣化を許してしまうので注意が必要です。
時々作品を見るするつもりで開いて中身を見たり、取り出して風に当てましょう。
このとき、表面を保護するパラフィン紙に劣化や癒着がないか確認します。
セル画に変色などが見られたら、速やかに新しいものとの交換がおすすめです。
劣化がなくても、定期的に取り出したり空気を入れ替えるのは、寿命を延ばす結果に結びつきます。
保管は冷暗所が理想的ですが、具体的には25℃以下で湿度の変動が少ない場所が好条件です。
湿度を低く保つのは基本的に良いことです。
しかし、極端な低湿度も劣化を招くので、カビが増えにくい50%前後が目安となるでしょう。
セル画の保存を額でやる方法
セル画の保存を額でやる場合は直接保存する方法では劣化を招くという基本的な理解が求められます。
額は作品を壁に飾る為のものですから保存に向いているかといえば不向きです。
保存重視なら袋に入れることが不可欠なので袋に入れてから額に入れて管理する流れとなります。
袋は透明度が作品の見栄えを左右します。
そこで、おすすめは透明性の高いポリエチレン素材が狙い目です。
最初に埃を払い、次に指紋や皮脂などの汚れを拭き取ってから袋に入れます。
セル画は周囲の環境の影響を強く受けますから湿度や温度だけではなく圧力や光も気をつけたいものです。
光はセル画の塗料にとって大敵なので、本来であれば光を通さない、真っ黒な袋などに入れるべきでしょう。
飾って保存するとなると黒い袋は使えません。
そのまま直接入れるか、透明な袋に入れてからということになります。
他の方法で管理するのが得策ですが、どうしても飾りたいならば、UVカットを謳う製品を選びましょう。
透明でも表面がUV加工済みなら紫外線を通しません。
そのため、大幅に劣化を遅らせることができます。
ただ、紫外線ではない可視光線も劣化要因になり得るので、冷暗所の保管に比べると完璧ではなく油断大敵です。
蛍光灯をLEDに置き換える、カーテンもUVカット仕様に交換するなど、複数の対策を組み合わせるのが賢明です。
普段は照明を消してカーテンを閉め、光が発生したり射し込まないようにします。
ベストな管理方法ではないので、ベストな環境に近づける為の工夫や労力が必要になります。
より完璧に近づけたいのであれば、湿度や温度を安定させるエアコンの稼働に、空気清浄機の設置も考えたいところです。
個別に乾燥剤を入れたり、脱酸素剤を用いるよりもコストが掛かるので、環境負荷が大きくなることもあってエコではないです。
袋やファイルでも、観賞できなくなるわけではありません。
セル画のことを思えば袋が理想に近いです。
最初から額装されている作品については取り出して清掃してから袋に移し保管しましょう。
または、袋に入れて元に戻すことになります。
どちらの場合もそのままでは駄目なので、一度取り出して直接作品の状態を確認しましょう。
元の額装が再利用できるかどうかは、UVカット加工が行われているかによります。
加工済みなら再利用可能です。
ですが、未加工なら別のものを用意して移すか、UVコーティングを施して使います。
セル画の保存するときの湿度や温度と加水分解の対策
セル画の保存で大敵な湿度や温度は、高温多湿になると加水分解を加速させるので注意しましょう。
湿度は60%を超えると要注意、65%以上で危険と考えられます。
理想的なのは50%台で逆に40%を大幅に切らないようにしたいところです。
50%台はカビの活動が弱まり、水分を奪い過ぎることもない絶妙な数字です。
60%以上はカビだけでなくダニも増えてしまうほどです。
それだけ加水分解のリスクも高いです。
反対に20~30%台は水分を過度に奪うので今度は塗料がひび割れる恐れが出てきます。
温度は25℃を超えると、加水分解などの劣化が加速します。
ここに湿気という条件が加わると最悪です。
一見すると冷蔵庫は涼しげで保管場所に最適なイメージです。
しかし実は水分量の変動の幅が大きく60%を優に超えてしまうこともあるので加水分解対策には不向きです。
温度は10%以下と非常に低いですから、その点でも冷蔵庫は対策に向かないことが分かります。
数字の高い低いも重要です。
しかし、短時間の内に急激に変化しないことも、セル画の保存においては無視できないポイントです。
トレス線は紫外線の影響を受けて真っ先に退色します。
ですが、湿度や温度は塗料に大きな影響を与えます。
絵の具で着色されているセル画は、成分によっては容易に劣化しやすくなります。
短期間高温多湿に晒しただけでも傷みを見せます。
乾燥剤の量で湿度を調節するタイプの防湿庫は過乾燥になりにくく緩やかな変動に留まるので、加水分解対策の有効な選択肢です。
冷暗所に設置する必要はあります。
でも移動は容易なので楽ですし、小分けの容器をスタックで重ねておけるのも見逃せないです。
ガスを吸着する活性炭などと一緒に入れておけば、酢酸の影響も最小に留めることができます。
密閉保存に抵抗感があって通気性を確保したいのであれば昔ながらの桐箱が代替候補となるでしょう。
木製なのでカビに注意は必要ですが、適度な調湿作用を持つので、湿度の変動が緩やかになって塗料には良いです。
容器を置く場所がないときは、薄手で袋やファイルと組み合わせやすい、紙タイプの調湿材やフィルムタイプの乾燥剤があります。
温度の方は、家の中で一番涼しい部屋を選んだり、風通しを良くして低く保つ手が有効です。
それでも、梅雨明けは気温が上がりムシムシとします。
エアコンなどの空調を使わないわけにはいかないでしょう。
気候変動と平均気温の上昇で、セル画が作られた当時と現在では環境が変化しています。
変化に合わせて対策を行うことが大事です。
まとめ
セル画の保存方法はどれがいいかというと、ビニール袋で密閉しながら、定期的に開封して空気を入れ替えるのがおすすめです。
※ビニール袋のメリット
埃(ほこり)の付着を阻止し、酸素や湿気を塞いで劣化の進行を遅らせるメリットを挙げられます。
※ビニール袋のデメリット
定期的に開封を行ったり空気を入れ替えなければ、溜まった酢酸が劣化を発生させるので、管理に手間が掛かるのはデメリットだと考えられます。
※ファイルのメリット
ファイルはよくあるクリアファイルを指し、市販されているものが利用できること、入手性やコストという部分がメリットでしょう。
※ファイルのデメリット
デメリットですが、柔らかく外圧でたやすく変形しますから、重量が掛かったり強い衝撃からの保護には適していないでしょう。
※額のメリット
額はセル画を壁に飾って楽しむことができるのが一番のメリットです。
※額のデメリット
飾ることで寿命を短くすることもあるのがデメリットだといえます。
セル画の保存で大敵な湿度や温度は、高温多湿になると加水分解を加速させるので気を付けましょう。
乾燥剤の量で湿度を管理するタイプの防湿庫は過乾燥になりづらく緩やかな変動に留まるから、加水分解対策のおすすめの選択肢でしょう。
気候変動と平均気温の上昇で、セル画が作られた当時と現在では環境が変化しています。
変化に応じて対策をすることが必須となります。
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